先月8月10日、株式会社IT工房Z(名古屋市)が開発、運用する温室向け環境モニタリングシステム【あぐりログ】が、高品質で効率的なハウスミカン栽培を実現するための一環として、JA蒲郡市のハウスミカン生産者全戸に本格導入されることが発表されました。
「高価でなかなか踏み出せない」「導入、設定が難しい」など、農業のIT活用がなかなか進まない中、簡単!シンプル!安価に使える!とあって、愛知県を中心に全国へと広がりを見せる【あぐりログ】の導入。
株式会社IT工房Z 代表取締役 座光寺 勇さんからお話を伺い、その魅力と“安価で実現できた背景”に迫りました。
環境モニタリングサービス【あぐりログ】って?
中小規模の温室の環境(温度・湿度・二酸化炭素など)を測定して、温室環境をいつでもどこでも見られるようにするサービス。
導入も設置も使い方も簡単!
事前に準備することは、たったひとつ!
設置位置までの100V電源を配線するだけ!
設置は、小さなセンサーの入った箱【あぐりログBOX】が届いたら
100V電源に繋げ、ご自身の手でハウス内に吊り下げるだけでOK。
その約5分後には・・・
データがすぐ見える化!
たったこれだけで“いつでもどこでも”
温室の状態を手軽にPCやスマートフォンから確認できます!
標準で計測できるのは、「温度」「湿度」「二酸化炭素」の3つ。
その他オプションで、他の場所の温度や、日射の強さ、土の中の温度や水温を測るセンサーをつけることもできます。
さらに!「お友達機能」がついていて、自分の温室だけでなく、他の人の温室との比較も可能。
データを共有でき、JA蒲郡市のように、ハウスミカン生産者全戸に導入することで、全体の底上げも期待できます。
あぐりログ開発ストーリー
簡単!安価!を実現。
昔から温室の中を測定する機器はありましたが、試してみようと思えるような値段ではなかったと言います。(開発当初にあったものは、導入に2、30万円必要)
また、いつでもどこでもデータが確認できるものはなく、温室へ行かなければ、数値を確認する手段がありませんでした。
ただ、ハウス内の環境をどうにか計測しようと、農家さんはさまざまな試みをされており、ニーズはあると感じた座光寺さん。
「いつでもどこでも見られたら、農家さんの行動範囲が広がる。そういう形でサービスを展開しよう!」
「農家さんが試したくなる値段で作ろう」と決意。
そうして最初に作った機器がこちら。
まずは市販のセンサーと小さなコンピューターを線でいっぱい繋いでみたところ、計測はできたものの、機材の塊に。こうなると配線も多く、移動や取り外しも大変。
次の段階では、“運用しやすくするためには”を第一に考えて試行錯誤。
最初に、小さなコンピューターとセンサーとの組み合わせをひとつの箱の中に並べて繋いでみたというBOX。
さらに開発の過程で、電子部品が販売されているお店を訪れ、偶然、「これなら入るんじゃない?」と見つけた箱をきっかけに誕生した【初代あぐりログBOX】がこちら!!!
すべて手作りなので、よーく見ると手作り感満載です。
誰でも簡単に使えるようにするには?
「吊り下げられたら便利だよね」「電源1つで繋がったら便利だよね」
そのようにして、ひとつひとつ使う立場に立って、改良を重ねられたIT工房Zのみなさん。
さらに当初から第一に考えていた大切なことは
「試してみたくなる値段で作ること」
最初に販売したあぐりログBOXは、部品代だけで約50,000円です。
対して、販売価格はいくらに設定されたと思いますか??
それは・・・驚きの「58,000円!」
(現在は少し値上げしています。詳しくはこちら)
つまり開発費用はたったの8,000円だけ。
どう考えても採算を度外視した、完全なる原価割れ。
あまりに無茶な設定に、最初はさんざん周囲からも(温かい?)お叱りを受けたという座光寺さん。
そもそも「安い」や「高い」といった発想は全くなかったそう。
「いくらぐらいなら試す気になるかな?」
それがすべて。
そこに一番こだわった背景には、インターネットの普及があるのだとか。
今や、誰もが簡単にインターネットを楽しむ時代ですが、
インターネットが出た当初は、モデムも高価で速度もとんでもなく遅かった。
それがどんどん安くなり、設定も簡単に、モデムはタダでも配られるように。
もしモデムが高いままだったなら、こうはならなかったはず。
インターネットの爆発的普及から
「試してみたいなと思う気持ちが大事だな」と感じたという座光寺さん。
それは、いつしか座光寺さんのひとつの大切な信念にもなりました。
農業とのかかわり
システムエンジニアとして30年以上仕事をしてこられた座光寺さんは、もともと農業とは全くかかわりがなかったそう。
前職で農業試験場の組織のIT化を請け負ったことでのご縁がきっかけで、施設園芸でトマトの収穫量最大化を目指す研究事業に携わることになり、農業者との接点が生まれていきました。(参考:創業ストーリー)
「ゼロ」だったからこそ、先入観なく、純粋に生産者や生産者を支える方々の声を聞き、それを形にしてこられました。
今、農業との接点を持たれて、農業に対しての思いがすっかり変わったそう。
どんな風に?とお聞きすると
「こんなに面白いものはない!」と楽しそうなお答えが。
野菜や植物は生き物だから、手をかけた分、結果が変わる。
農家さんのところへ行って、きれいに植えられている様子を見たり、美しく育つ様子や収穫する様子、良いものもそうでないものも含めて、いろんな風に実がなる。
そばで見ているのはとても楽しく、またそれらを育てるために一生懸命データを見て工夫されている姿を横から見ていると、まず「作って良かったな」と思えるし、「他にはどんなものが必要なのかを探りたくなる」のだとか。
農業に関しては、まだまだ勉強中です!と笑う座光寺さん。
お話を伺う中で、座光寺さんからは、農業にITを活用することへの純粋な「好奇心」と、関わる方お一人お一人の声を大切に実現されていく「真摯なお姿」が感じられ、それが農業者の方をはじめ、試験場のみなさまやJAの職員さんなど関わる方との信頼にも繋がっているのでは、という気がしました。
あぐりログは常に進化中!
あぐりログを実際に導入された方からは「とにかく便利!」などの喜びの声が聞かれる一方で、きちんと測定でき、目に見えるからこそ、より正確なデータであることの保証が求められるそう。
生産者や生産者を支える多くのみなさまの声を受けて、その場、その場で即時に対応しながら、改善と新たな開発を重ねてらっしゃいます。
それだけ期待値の高さが感じられます。
望まれて使ってもらえることが一番
座光寺さんが目指すのは、
インターネットを当たり前にみんなが使えるようになったように、誰もが【あぐりログ】を当たり前のように使い、データを計測するのも、利用するのも“当たり前”な状況をつくること。
そしてそれが近い将来、収穫量や収入のアップにつながり、また、新規就農者の方にとって、農業で生計をたてていくことや、農業を始めることへの敷居を低くする要素のひとつになりたい、との思いもあります。
そんな未来は近いかもしれませんね(*^^*)
今後の進化にも注目していきたいと思います。座光寺さん、ありがとうございました。
会社情報
株式会社IT工房Z
〈住所 〉名古屋市中区新栄2-2-24 あいちベンチャーハウス203
〈電話〉052-238-1355
〈FAX 〉052-238-1356
〈URL 〉http://itkobo-z.jp
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